チプルママ vol. 14
深夜から朝にかけて、寝て、起きて、の繰り返しです。
タンの吸引のたびに、とってもイヤがって暴れます。そのたびに手足を押さえながら「ごめんね、ごめんね」を繰り返した深夜でした。
そして、自分でバタバタとあばれているのに、押さえているチプルの頭にチプルママのエルボが決まると「ごめんなさい」と謝っていました。
時折、「ハッ!」と目を開けて両手を上にあげて何かを掴もうとしている仕草をとります。そして「起こして、起こして」と言うたびに「寝てていいから、起きなくていいんだよ!」とゆっくりとなだめて眠りにつかせました。
これを、何度も繰り返していました。
今考えると、また立ち上がって自分の足で歩きたかったのかなと思います。
がんにもモルヒネにも負けない。まだ死なない。まだやりたいことがあるのに、と。
チプルママの生命力を、ものすごく感じました。
生きようとするチカラ。意志の強さ、我慢強さ、謙虚さ。
がんばって呼吸をして、病気にも薬にも負けないチカラ強さ。
チプルママってすごい、母って強い、女性って強いんだ、って心の底から感心し、敬服し、そして、なぜチプルママがすい臓がんなのか、悔しくて涙が止まりませんでした。
本当に悔しいです。
命はいつか失われますが、でも、今じゃなくてもいいのに。
もっと一緒にいたいです。
もっと早くに病気のことを気付いてあげたかった。
もっと効果のあるかもしれない治療を調べてあげたかった。
これから、もっと人生を一緒に歩きたかった。。。
お昼過ぎに、呼吸の仕方が突然変わりました。
通常 90以上ある血液中の酸素の値が、急に 66 まで下がり始めました。
呼吸をしても、酸素を取り入れることが出来ない状態です。
苦しそうな呼吸が 5分ほどしたのち、呼吸が浅くゆっくりと変化していました。
一遍して、やさしい表情に変化していきます。
もうがんばることはしないでいいのに、がんばってゆっくりと呼吸をしています。
目をぱっちり開き、どこか一点を見つめているようです。
クチで呼吸をしながら、息を吐き出すときに、何かの言葉を発しているようです。
くちびるを読むと、「チプル...」と呼んでいるような気がしました。
何度も何度も、呼んでいます。
ありったけの言葉を、とにかく叫んでいました。
「ありがとう!」
「産んでくれてありがとう!」
「チプルママの子でよかった」
「もうがんばらなくていいんだよ」
「2年間、よくがんばったよ」
「あんなにがんばったのに、悔しいよお」
「本当に悔しいょぉ...」
「でも本当にありがとう」
とっても長かったです。
1時間は、ゆっくりとした呼吸をがんばっていました。
ひとつひとつの呼吸を、脳裏に焼きつけました。
胸をさすって手を握って、一緒にゆっくりと呼吸をして。
そして、息を「はっ」と吐いて、次の息を吸うことはありませんでした。
のんびりとした呼吸が、もう一度再開されることはありませんでした。
すごく静かに、やさしい表情で眠ることができました。
家族みんなで、看取ることができました。
たくさんのお礼の言葉を、伝えることができました。
でも、チプルが今までやってきたことすべてが、よい方向に向かうことはありませんでした。。。
チプルの選択が正しかったのかどうか、今は正直、判断することができません。
ただ、セカンドオピニオンや今後の治療についてチプルの選択を正しい方向だと信じ、一緒に歩んでくれたことは、チプルママにとってもチプルにとっても、とっても幸せなはずだったと思っています。
本当に悔しいです。
最期は後悔しないようにしようと思っていても、母親の他界を後悔しないようにすることなんて、チプルにはできません。もっとたくさんやりたいことがあったであろうに、それを叶えてあげることができなかったんです。
不老不死なんて、望みません。
ただ、一緒に歩む時間を少しでも多く与えてあげたかったです。
ありがとう、お母さん。