チプルママ vol. 15
昨日の続きと病院でのお話を。
チプルママが息を引き取った直後、クチから血がツーっと流れてきました。ちょっと痛々しい光景で、きっとお腹の中はすごいことになっていたのに息のあるうちはそんなこともなかったので、命のある限り必死にがんばっていたんだなぁと思います。それでも痛みが無かったかのように静かに眠っていったので、適切な処置をしていただいたお医者さんと看護婦さんに感謝です。
チプルママは、すい臓がんになって自宅治療をする前、看護補助のお仕事をしていました。看護婦さんのお仕事の大変さが分かっていたので、痛み止めの点滴がなかなか来なくても、シャワーをお願いするときも、とっても気を使って「今は忙しいから、まだ呼ばないで」なんてことを言っていました。
自分の痛みを我慢して、人に気を使っていたチプルママでした。
お腹から胆汁を出すための管を通していたので湯船に入ることは当然できず、痛みのせいでシャワーを浴びることも億劫になっていて、チプルが勧めてもなかなかシャワーに行くことに気がすすまない様子だったとき。
一週間ぶりにチプルママの部屋の担当になってくれた看護婦さんが、
「久しぶりに担当になったから、洗髪させてほしいなぁ」
「今度いつ担当になれるか分からないから、シャワー行きましょうよ」
という勧め方をしてくれたので「じゃあ行こうかしら」と、嬉しそうにシャワーに向かっていったときがありました。
この看護婦さんにはその後もずっとお世話になり、チプルママの最期を看取っていただきました。
モルヒネで意識が朦朧としているチプルママに、この看護婦さんが話しかけるとニコっとしていたチプルママが印象的でした。
主治医のお医者さんは、実はチプルママのすい臓がんを初めに発見してくれたお医者さん。家族の判断でセカンドオピニオンの末、別の病院の別のお医者さんに手術をお願いしたのですが、そのお医者さんが「もっと近くの病院で最期を診てもらった方がイイのでは?」ということで、初めのお医者さんに戻ってお願いしたのでした。
このお医者さんは、手術を別のお医者さんにする判断をしたにも関わらず二つ返事で入院を受け入れてくれて「なにもできない状況で、本当に申し訳ない」と言いながら、親身になって痛みの緩和を優先した処置してくれました。
こちらこそ、どうすることもできない状況でチプルママの辛い処置をお願いして、とても大変だったと思います。
他界したあと、エンジェルセット(亡くなった人の処置をする道具セット)を持った看護婦さんたちがチプルママをきれいにしてくれました。
そして、病室にあったたくさんの荷物をまとめました。
つい先程まで使っていたタオルや着替えるはずだったパジャマ、大好きだったカフェオレ、いつも見守っていたプーさんのぬいぐるみ、愛用の湯飲みや水筒。。。
キレイになったチプルママの横で、たくさんの話しをしながらお片づけをしました。
最後にナースセンターのみなさんに深々とお礼をして、チプルママを乗せた葬儀屋さんの車を NewMINI で先導していきました。
退職する前に勤めていた病院前、通勤で通った駅の前、病気になったあと NewMINI で買い物に通ったスーパー、大好きだったアジサイ園、体力回復のために歩いた散歩コースなどなど、思い出の場所をぐるぐると回って、一度自宅に到着しました。
ちょっと寂しいですがチプル家は団地で部屋が狭く、お通夜まで二日を空けることから、家に戻ることなく葬儀予定の会場に移動しました。
そのまま葬儀などについて色々な打ち合わせ。
亡くなったことを悲しむ暇がありませんが、今はそのほうがよいのかもしれません。お友だちがたくさん来ると思うので、最後までがんばって立派な告別式をしてあげなければ。
告別式の会場の安置所にチプルママをお預けして、お線香をあげました。よくある表現ですが、今すぐにでも起き上がりそうな、そんな静かな寝顔でした。
でももう、起きなくていいかなと思います。
あれだけがんばったんですから、今はとにかくおやすみなさい。